金属組織を調べるときに必要なものって何だろう?観察する状態にする手順や方法を詳しく知りたいなぁ…。
こういった疑問に答えます。
この記事を読むと金属品質の確認可能になり、以下のような評価を自前化することができます。
- 物性評価(硬度、組成など)
- 不良品調査
アルミダイカスト製品を事例にして、詳しく説明していきますね!
金属組織の観察で必要なもの
金属組織の観察方法を簡単に述べると、「サンプルを樹脂埋め後、確認したい断面まで研磨して追い込んでいく」という流れになります。
それに伴って以下の道具が必要なります。
- 2液硬化型の樹脂
- 卓上型の試料研磨機
- 耐水サンドペーパー
- 顕微鏡
- 腐食液
いくつか補足があるので、順番に解説します。
2液硬化型の樹脂
2液硬化型の樹脂は、確認したいサンプルを樹脂埋めするために必要になります。
断面を確認するだけならサンプルを削れば良いだけでは?
上記のような疑問が出るかもしれませんが、樹脂埋めしておかないと以下の場面で不憫に感じます。
- 研磨作業時にサンプル形状によっては研磨しにくい
(見たい断面まで追い込みしにくい) - 研磨後の顕微鏡による確認時に平面で設置できず観察しにくい
また、2液硬化型樹脂に限らず、お金のある企業であれば熱硬化性樹脂を使った樹脂埋め機(樹脂埋込用機器)を導入すると良いです。
イメージしやすい動画があったので、貼り付けておきますね!
樹脂埋め機は加熱するための電気代は掛かりますが、
樹脂埋め作業が早く終わるので効率が良い点がメリット!
この記事では、Amazonなどで気軽に入手できる2液硬化型の樹脂を提案させて頂きます。
顕微鏡について
見たい組織にもよりますが、通常は500倍まで大体の知りたい内容は把握できます。
よほど細かい組織の確認が必要になれば、1000倍まであれば充分だと思います。
記事を書くにあたって調べていましたが、本格的な顕微鏡もネット通販で購入することができるみたいですね!
腐食液について
腐食液はエッチング(Etching)作業時に必要になります。
エッチングとは、不要な金属を溶かして観察したい金属のみ際立たせる(断面組織の淵(エッジ)を出す)操作のことを言います。
ちなみにアルミダイカスト製品では、Tucker液を使います。
参考にアルミ合金でよく使用される腐食液を一覧表に示します。
腐食液には複数の種類があり、観察したい部位や材料によって使い分けられます。
鋳造品や鍛造品でよく用いられる腐食液の一覧を示しておきます、
腐食液名 | 組成 | 注意書き |
---|---|---|
苛性ソーダ | NaOH 10g H2O 90ml | 全般の欠陥検査 一般のマクロ腐食 |
フッ酸 | HF 10ml H2O 90ml | 高けい素合金鋳物、鍛造材の一般マクロ腐食 |
塩化第二銅 | CuCl2 15g | マクロ組織が表れないうちに表面が荒れる場合 |
Tucker液 | HF 15ml HCl 45 ml HNO3 15ml H2O 25 ml | 砂型、金型、ダイ鋳物の表面に適しており、鋳物および鍛造罪の一般マクロ腐食用 |
腐食液名 | 組成 | 注意書き |
---|---|---|
苛性ソーダ | NaOH 10g H2O 99ml | 相識別 一般ミクロ組織検出用 |
フッ酸 | HF 0.5ml H2O 99.5ml | 高けい素合金鋳物、鍛造罪の一般マクロ腐食 |
Keller液 | HF 1ml HCl 1.5ml HNO3 2.5ml H2O 95 ml | 微細組織検出 相識別 溶質濃度分布検出 |
改良 Tucker液 | HF 15ml HCl 15 ml HNO3 5ml H2O 75 ml | 微細組織検出 粒界、相識別 溶質濃度分布検出 |
マクロ or ミクロどちらで見たいか?によって、同じ名称でも微妙に薬品の配合も変わっているので注意が必要です。
世の中に出回っている工業製品の金属は、ほぼ何かしらの金属が混じった合金です。
観察に不要な金属は意図的に薬品(塩酸や硫酸など)で溶かしてあげて、見やすいようにしてあげましょう!
評価品の下準備
評価品について、以下のような工程で準備していきます。
- STEP 1サンプルの切り出し
サンプルの中で評価したい部位を切り出し、樹脂埋めしやすいサイズにします。
金属切断用ノコギリや切断機を使うと良いです!
観察したい断面の手前でカットし、後工程の研磨作業で観察断面まで追い込んでいきます。
- STEP 2サンプルの樹脂埋め(包埋)
先に紹介したような2液硬化型のエポキシ樹脂などを使って、STEP 1で切り出したサンプルを樹脂埋めしていきます。
- STEP 3樹脂埋めサンプルの研磨
樹脂埋めサンプルを粗目の番手で研磨し、観察したい断面まで追い込んでいきます。
各番手は以下のイメージで使用します。
- #180~#320:追い込み
- #320~#600:微調整
- #800~ :仕上げ磨き
- 最後にアルミナ液で研磨
金属によっては、研磨で傷が付きやすいものがあるため観察したい断面のクオリティに合わせて番手を使い分けましょう。
- STEP 4エッチング
腐食液を使って、不要な金属を溶かしていきます。
腐食中は化学反応によりガスが発生して研磨面との反応を阻害するため、研磨面は水面側に向けてエッチングしましょう。
腐食生成物で研磨面が黒く汚れてしまった場合は、硝酸(HNO3)で拭き取ると良いです。
- STEP 5サンプル観察
観察したい断面の処理が全て終えたら、サンプルを確認しましょう。
断面確認の結果、見たいものが確認できない場合はSTEP 3~4を繰り返して観察したい断面まで追い込みましょう。
まとめ
金属組織を調べ方について、まとめてみました。
中小企業の鋳物屋さんでは鋳造品質の自ら確認ができないところが多いのかな?と感じています。(私が業務する中で)
この記事を参考に金属品質の確認が自前化できたら嬉しいです!
コメント
初心者にもわかりやすく説明されていて感心しました。
ただ,腐食作業は「エッジング」ではなく「エッチング(Etching)」だと思います。
コメント・ご指摘ありがとうございます!
励みになりますので嬉しいです(#^^#)
お恥ずかしい間違えをしていましたので、助かりました。
記事を修正したので、ご報告させて頂きますm(_ _)m
また、ご要望等ありましたら、お気軽にコメントくださいね!
よろしくお願いします。