令和4年度前期 技能検定1級 ダイカスト(コールドチャンバダイカスト作業)実技試験(計画立案等作業試験)問題の独自解説

このページでは、令和4年度前期 技能検定1級 ダイカスト(コールドチャンバダイカスト作業)実技試験(計画立案等作業試験)問題について、当サイト管理人の独自解説を記載します。

ある美
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ある美

鋳造エンジニア。
製品開発から金型設計に加えて、現場改善まで行うスペシャリスト✨
専門:コールドチャンバーのアルミ合金ダイカスト

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問題1

設問1

問1

製品図から外枠の寸法を読み取り、開口部の寸法を引いてやれば良い。


\begin{split}
投影面積 &=& 210\times180-60\times90 \\
&=& 37,800-5,400 \\
&=& 32,400[mm^2] \\
&=& 324[cm^2]
\end{split}

問2

公式「圧力=力÷面積」から、問題文の数値を当てはめれば良い。


\begin{split}
圧力
&=& マシンの射出力 \div スリーブの断面積 \\
&=& 300[kn](30tf)\div 40 \times 40 \times 3.14[mm^2] \\
&=& 0.05971…[kN/mm^2] \\
&=& 0.05971… \times 10^6 \times 10^-3 [kN/m^2] \\
&=& 59.\cancel{7}1[kN/m^2] \\
&=& 60[kN/m^2] \\
&=& 60[Mpa] \\
\end{split}

問3

公式「力=圧力×面積」から、問題文の数値を当てはめれば良い。


\begin{split}

&=& マシンの射出圧力 \div 方案(製品、ランナー、オーバーフロー及びビスケット)の全投影面積 \\
&=& 60[MPa](問2の答え)\times 500[cm^2] \\
&=& 60×10^3[kN/m^2] \times 500×10^4[m^2] \\
&=& 3000[kN] \\
\end{split}

問4

問3の答え「3000[kN]」を使用し、安全率1.15を加味した値が型開き力となる。

経済性を考える = その型開き力を上回る最小の型締力を有すマシンを選択肢から選べば良い。


\begin{split}
型開き力
&=& 3000 \times 安全率1.15 \\
&=& 3450[kN]
\end{split}

3450[kN]を超える最小の型締力は、3500kN(350tf)となる。

設問2

「必要押出ロッド長さ」は、押出状態のロッド長さ+押出したい量となります。

押出状態のロッド長さは、押出プレートと可動盤クリアランス ⁺ 可動盤暑さ ⁺ 可動盤と金型押出板クリアランスで求められます。←に「押出したい量」を加えれば良い。


\begin{split}
押出状態のロッド長さ
&=& 30 ⁺ 200 ⁺ 50 ⁺ 35 \\
&=& 315[mm] \\
\end{split}

設問3

固定型と可動型それぞれの熱膨張量を計算後、その差を求めれば良い。


\begin{split}
固定型の熱膨張量
&=& 700[mm] \times 110[℃] \times 12 \times 10^{-6}[/℃] \\
&=& 924000 \times 10^{-6} \\
&=& 0.924 …Aとする\\
\end{split}


\begin{split}
可動型の熱膨張量
&=& 700[mm] \times 140[℃] \times 12 \times 10^{-6}[/℃] \\
&=& 1176000 \times 10^{-6} \\
&=& 1.176 …Bとする\\
\end{split}


\begin{split}
熱膨張後の膨張差
&=& A – B \\
&=& 0924 – 1.176 \\
&=& \cancel{-}0.25\cancel{2}[mm] \\
\end{split}

設問4

(1)

ADC12の保持炉の設定温度は、通常660℃~680℃の範囲で設定します。

設定温度が高い場合

設定温度が高い場合、酸化の進行が進みやすく、酸化膜・酸化物がダイカスト製品内に混入し、機械的性質の低下やハードスポットの原因になります。また、鋳造温度は金型に吸収される熱量と比例するため、金型寿命の低下に繋がります。

設定温度が低い場合

設定温度が低い場合、溶湯が射出スリーブ内で凝固しやすく、破断チル層の発生原因となります。
破断チル層により製品強度低下や湯流れ性の低下を招く。

(2)

圧力が制御できていないため、圧力制御弁の設定ができていない。

設問5

問1

高速射出区間の体積 = 製品体積+オーバーフロー体積である。

問題文には重量・密度の記載があるため、それらから高速射出区間を求めれば良い。

高速射出区間をXとすると、


\begin{split}
(343[g] + 200[g]) \div 2.4[g/cm^3]
&=& 4 \times 4 \times π \times X\\
X &=& 543 \div 2.4 \times 4 \times 4 \times π \\
&=& 4.5[cm] \\
&=& 45[mm]
\end{split}

問2

(1)

問1で求めた45[mm]が高速射出区間となるため、その区間を0.045秒で充填完了させることとなる。

よって、


\begin{split}
45[mm](問2の答え) = 45 \times 10^{-3}[m] &=& 0.045[m] \\
0.045[m] \div 0.045[s(秒)] &=& 1.00[m/s]
\end{split}

(2)

チップとゲートの断面積・速度の比からゲート速度を導く。


\begin{split}
チップ断面積[mm^2]:チップ速度[m/s] &=& ゲート断面積[mm^2]:ゲート速度[m/s] \\
40 \times 40 \times π [mm^2]:1.0[m/s]((1)の答え) &=& 90 \times 1.3 [mm^2]:x[m/s] \\
40 \times 40 \times π [mm^2] \times 1.0[m/s]((1)の答え) &=& 90 \times 1.3 [mm^2] \times x[m/s] \\
x
&=& 42.\cancel{9}40…[m/s] \\
&=& 43[m/s]
\end{split}

問3

スリーブ内の充填率 = 注湯量 ÷ スリーブ全体体積 で求められる。

よって、


\begin{split}
\frac
{ 1000[g] \div 2.4[g/cm^3] }
{ 340[mm] \times 40 \times 40 \times 3.14[mm^2] }

&=&
\frac
{ 416.66…[cm^3] }
{ 1708160…[mm^3] } \\

&=&
\frac
{ 416.66… \times 10^6[m^3] }
{ 1708160… \times 10^{-9}[m^3] } \\

&=&
\frac
{ 416.66…[m^3] }
{ 1708.16…[m^3] } \\

&=&
24.\cancel{39}[%]
\end{split}

問4

歩留ぶどまりとは、原料や素材の投入量に対して、実際に得られた生産数量の割合のことです。

歩留り = 製品質量 ÷ 鋳込み質量 にて求められます。


\begin{split}
\frac
{ 343[g] }
{ 1000[g] } \times 100

&=&
34.\cancel{3}[%]
\end{split}

設問6

(1)

降下率は、1 – 射出時の圧力 ÷ 射出前の圧力 × 100で求められる。


\begin{split}
1 –
\frac
{ 10[MPa] }
{ 12MPa] } \times 100
&=&
16.\cancel{6}66…[%] \\
&=&
17[%]
\end{split}

(2)

窒素ガス補充の要否の閾値は、10%である。

よって、(1)で求めた値17%は10%を超えているため、「必要」となる。

(3)

管理値以上にひずみが生じるのは、金型の温度差が「大きい」ためである。

※ 金型温度が高いほど熱膨張により、金型が大きくなりひずみ量が多くなる。

(4)

焼付きが生じるのは、金型温度の上昇が原因である。

よって、金型温度が下がるようにするため、離型剤の塗布量を「多く」する必要がある。

設問7

(1)

湯境が発生するのは、冷えた溶湯の合流が原因である。

(2)

湯境が発生した位置に最も近い選択肢は、窓内上部である。

設問8

問1

低速段階における波形の乱れは、加熱や冷却により、射出スリーブ内径とプランジャーチップ外径がラップするような設定(軽圧入のような状態)となる場合に発生する。

これが発生しうる選択肢は、プランジャーチップの冷却水の通水忘れである。

問2

充填中の圧力が低下する理由は、ゲートを厚くしたために製品部の充填がスムーズになり、抵抗が掛からなくなるため。

問3

射出停止時における圧力の振動の原因は、射出系部品と作動油の慣性力が原因である。

問4

ゲート断面積と速度で金型修正前後の値で比を取れば良い。

設問7の問題文にゲート厚みを1.3mm ⇒1.5mmへアップしたとある。

まずは、金型修正前後のゲート断面積を求める。


\begin{split}
90 \times 1.3
&=&
117 [mm^2] \\
90 \times 1.5
&=&
135 [mm^2]
\end{split}

設問5・問2の答えを用いて、比の計算を行う。


\begin{split}
117[mm^2]:43[m/s](設問5・問2の答え) &=& 135[mm^2]:x[m/s] \\
x &=&
\frac
{ 117 \times 43 }
{ 135 } \\
&=& 37.\cancel{2}66…[m/s] \
\end{split}

最後に設問6・(1)で求めたアキュムレーター圧力の降下率17%を考慮して、


\begin{split}
37 \times (1-0.17)= 30.\cancel{9}313…
&=& 31[m/s] \
\end{split}

設問9

(1)

単位[HRC]を使用する硬さ試験は、ロックウェル硬さ試験のみ。

各硬さ試験の単位は以下の通りである。

  1. ロックウェル(HRC)
  2. ビッカース(HV)
  3. ブリネル(HSB)(HBW)

(2)

SKD61で38HRCは軟らかい。通常は、HRC53~56

(3)

金型硬度が低いと、金型と鋳造合金の間でアブレシブ磨耗という、硬い材料が柔らかい材料に食い込んでひっかき(スクラッチ)を起こし焼き付く現象が起こる。

設問10

問1

用語の意味をおさらいすると、以下の通りである。

潜熱…液体から固体に変化する際に、温度変化しない状態で費やされる熱のこと

比熱…単位重量当たり温度を1度あげるのに必要な熱量

溶湯が液体から固体へ変化する際に費やされた潜熱量と溶湯温度680→430℃(変化量250℃)へ変化した熱量を合計してやれば良い。


\begin{split}
潜熱の熱量:394.8[kJ/kg] \times 1[kg] = 394.8[kJ] \\
比熱の熱量:0.96[kJ/kg・℃] \times 1[kg] \times 250[℃] = 240[kJ] \\
合計の熱量:394.8+240=638.4[kJ] \\
\end{split}

上記が1ショットあたりに奪われる熱量であり、問題にある100ショットあたりに換算すると、


\begin{split}
394.8+240=638.4[kJ] \times 100[ショット] = 63480[kJ]\\
\end{split}

問2

問1の算出結果から65%は金型冷却水が奪うので、その熱量を先に求める。


\begin{split}
63480[kJ] \times 0.65 = 41262[kJ]\\
\end{split}

冷却水が奪った上記の熱量から温度上昇する値を求めると、


\begin{split}
\frac
{ 41262[kJ] }
{ 4.18[kJ/kg・℃] \times 700[L/h] \times 1[㎏/L] \times 1[h] }
&=&
\frac
{ 41262[kJ] }
{ 2926[kJ/℃] } \\
&=&
14.10…[℃] \\
\end{split}

給水時の温度に上記の温度を足してやれば良い。


\begin{split}
20[℃]+14.10…[℃] = 34.1[℃]\\
\end{split}

設問11

ゲートやサブランナーに入る溶湯は抵抗が掛かるため溶湯が流れにくい。

よって、溶湯は「ロ」から先にキャビティに入る。

問題2

基本的にダイカストマシンの該当動作が行われない原因は、1つ前の工程で問題が起きている。

よって、(1)、(2)では全て1つ前の動作を指しているものを選ぶ。

(3)は動作のタイマが終了しないことが原因である。

問題3

(1)

LPGバーナ空気比:1.00~1.05

重油空気比:1.20~1.60

(2)

通常、溶湯の成分分析は発光分光分析装置にて行う。

(3)

ADC1 Si含有量:11.0~13.0%

ADC12 Si含有量:9.6~12.0%

(4)

ADC12 1500㎏中8%しかSiが含まれていないので、ADC12 Si含有量:9.6~12.0%を超えるようにSiを添加すれば良い。


\begin{split}
現状:1500[kg] \times 0.08 &=& 120[kg] \\
下限:1500[kg] \times 0.096 &=& 144[kg] \\
上限:1500[kg] \times 0.12 &=& 180[kg] \\
144[kg] \times 120[kg] &=& 24[kg] \\
180[kg] \times 120[kg] &=& 60[kg] \\
24~60kg添加すれば良い。\\
\end{split}

(5)

Kモールド法では、調査対象の合金を冷やし固めたインゴットの断面を割り、その断面内に含まれる介在物の面積率で清浄度を判定する。

ほぼ清浄との記載があるため、限りなく0に近い0.1が答えとなる。

問題4

(1)

チェーンスリングに最も負荷が掛からなくなるのは、正三角形を描くθ=60°のときである。

(2)

φ4押出ピンの2倍の強度を有す押出ピン径は、φ6である。

φ4押出ピンの3倍の強度を有す押出ピン径は、φ7である。

(3)

折れた押出ピンに深いきずが発生しているので、押出ピン穴径に問題があることが読み取れる。

よって、押出ピン穴を同じ穴径で再加工する選択肢が答えとなる。

(4)

玉掛け技能講習…1トン以上の金型を吊り上げるための玉掛け作業を行うときに必要

玉掛け特別教育…1トン未満の金型を吊り上げるための玉掛け作業を行うときに必要

問題5

設問1

(1)・(2)

高温高速の溶湯の衝突やキャビテーション現象によって損耗すると、金型が損耗する。

設問2

(1)

ばりの発生により寸法がばらつく箇所は、PLを跨いだ寸法や引き抜き中子で形成される部位である。

(2)

取出し温度が高ければ高いほど、製品は熱膨張しているので常温になった際の熱収縮量は大きくなる。

よって、寸法は小さくなる。

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